miniDSP 2×4 HD、DDRC-24、Flexシリーズ、SHDシリーズ
パッシブ・クロスオーバーは、抵抗、コイル(インダクタ)、コンデンサーなどの部品だけを使って、パワーアンプの出力信号(スピーカーライン信号)を、ウーファー、ミッドレンジ、ツイーターなどのドライバーごとに異なる周波数帯に分割します。
下図は典型的なシステム構成です。パッシブ・クロスオーバーはスピーカーキャビネットの中に配置されています。
この図では、2Wayクロスオーバーを使用しており、ウーファーとトゥイーターのカットオフスロープは比較的緩やかです。カットオフスロープを急にしたい場合は、より多くの部品が必要となります。
アクティブ・クロスオーバーは、プリアンプとパワーアンプの間に配置され、ラインレベル信号の状態で周波数帯域を分割します。
下図の緑色の部分がアクティブ・クロスオーバーで、コンデンサー等の部品ではなく、アナログ電子回路になっています。
なお、ツイーターに直列に挿入されているコンデンサーは、特に電源オンオフ時に発生しやすい直流ノイズからツイーターのドライバーを保護するためのものです。
アクティブ・クロスオーバーの最大の利点は、パッシブ・クロスオーバーでは低い周波数を帯域分割するには、極めて大きな部品(コンデンサー、抵抗、コイル)が必要ですが、電子回路による帯域分割は周波数による影響を受けず、常に小さな基板サイズで実現できることです。加えて、急峻なスロープを持った特性も、比較的小さな基板サイズで実現できます。
音質面では、抵抗・コンデンサー・コイルを介さずにアンプにドライバーを直接接続することで、ダンピングファクター(アンプの出力インピーダンスでスピーカーのインピーダンスを割ったもの)が改善され、アンプがドライバーをより正確に制御できるようになります。
最近まで、ほとんどのアクティブ・クロスオーバーはアナログ電子回路で実装されていました。その利点は先に述べた通りですが、各クロスオーバー・フィルターを物理回路で実現する必要があり、たとえば、スロープを急勾配にするには、基板サイズは小さいままでも、追加のアナログ電子回路が必要になります。
つまり、アナログ電子回路で実現されたアクティブ・クロスオーバーは、ハードウェアの制約のもとで成り立っており、同じハードウェアで様々な特性を得ること極めては困難です。
一方、完全にデジタル信号処理で実現したデジタル・クロスオーバーは、ハードウェアを変更することなく、オーディオ処理を柔軟に、かつ簡単に変更できます。クロスオーバーの数は、使用しているDSPチップの演算パワーによってのみ制限されます。
また、デジタル・クロスオーバーは、デジタル音源からデジタル信号のまま直接入力することができますので、その場合はAD/DA変換による信号の品質劣化は皆無です。
下図の緑の部分が、デジタル・クロスオーバーです。
図には描いていませんが、アナログ信号を入力する場合はAD変換器を介して各フィルターに送られます。デジタル信号の場合は、そのまま各フィルターに送られます。
出力は、DA変換器を介してアナログ信号に変換されてアンプに送られます。
すべてのフィルタリングや音量調整は、デジタル信号処理を行うDSP上でソフトウェアとして実現しています。
高い柔軟性
2Wayから4Way、サブウーファーなど複数のオーディオシステムを構成できます。
また、フィルターの特性は、ベッセル、バターワース、リンクウィッツ・ライリーの3種類のフィルターを選択でき、スロープも広範囲に可変できます。
タイムアライメント
スピーカー・ドライバー間の時間遅延を補正するために、各クロスオーバーの出力にはデジタルディレイが搭載されています。
パラメトリックEQ
すべてのクロスオーバーには、スピーカー・ドライバーの特性修正、部屋の音響特性への対処、およびシステム全体の音質チューニングのために広帯域のパラメトリックEQ機能が搭載されています。
高度なバイカッド・プログラミング
デジタル・クロスオーバーの特性をカスタムメイドするために、IIRフィルターのバイカッド・プログラミング用にパラメーター(5つの掛け算係数)を外部からロードできるようになっています。