車のキャビンは、高品質なサウンド再生を行うには音響環境的に困難と言わざるを得ません。容積は小さく、低域から中域までは、車室の共鳴があります。車室内の表面のガラスや金属からは厄介な反射が発生する一方で、一部の表面材料は超吸音性の場合があります。さらには、それら表面材料の接合部の状態が悪いとガタガタと音を立てます。スピーカーをすべてリスナーに向けることはできず、車自体が風、タイヤ騒音、エンジンによって多くのノイズを生成します。唯一の良いことと言えば、リスナーの位置がほぼ変わらないことぐらいです。
それらの困難は、アナログ技術の時代にはどうしても乗り越えられないものでした。しかし、現代は違います。デジタル信号処理技術(DSP)により、カーオーディオのサウンド再生は飛躍的に改善できるようになりました。そして、純正カーオーディオと同様に、miniDSPを使えば、ユーザー自身で優れたサウンドを手に入れることができます。
この一連のCar Audioのアプリケーションノートの目的は、カーオーディオのサウンドを改善するための、音響測定とDSPに関する入門的な情報を提供することです。読みやすくするために、4つに分けています。
※この一連のアプリケーションノートは、Philipp Paul Klose 氏の投稿に基づき、J.TESORIで編集したものです。
【ご注意】
このアプリケーションノートでは、スピーカーとアンプが車内にすでに取り付けられており、かつ以下の条件を満たしていることを前提としています。