miniDSP 日本唯一の正規販売サイト

  車室内での測定のためのマイク技術

このアプリケーションノートは、REWによるカーオーディオチューニングに関するシリーズの一部です。
最初に、カーオーディオ概要をお読みになり、その後でこのアプリケーションノートをご覧ください。

<関連製品>

音響測定マイク: UMIK-1またはUMIK-2

<解説>

マイクのテクニックとその注意点

最初に申し上げておきますが、マイクのテクニックに正解や不正解はありません。すべてのセットアップには長所と短所があり、実践的な観点から評価すべきです。
実践的とは、測定に費やす時間、その時にどれだけの集中力で臨めるか、測定精度への欲求、測定中に車内に座りたいかどうか(あるいは座ることができるかどうか)などを指します。

幸いなことに、miniDSP製品は、あなたに適したやり方を見つけるための多くの選択肢とオプションを提供できます。以下に、そのいくつかをご紹介します。

1.UMIK-1/2を一ヶ所に固定配置(ログスイープ)

これは最も簡単な方法で、UMIK-1またはUMIK-2を任意の一ヶ所に置き、ログスイープ信号を使って測定するだけです。
チューニング時には、測定したデータを、スピーカーの感度チェック、極性チェック、および周波数分析に使用できます。

ただし、一ヶ所の測定では、反射の影響で、周波数特性に多くのピーク(山)とディップ(谷)が生じます(下図の青のグラフ)。一方、その測定結果を、アコースティック音場適用フィルター※を通すと、緑のグラフになり、特に、高域で大きな差が生まれます。
※詳細は不明ですが、周波数分解能を落とした処理だと考えられます(J.TESORI記)

2.移動マイク方式(ピンクノイズ、RTA分析)

この測定手法は、マイクを、リスニングスペースの周囲で10 ~ 30 秒間ゆっくりと移動します。テスト信号はピンクノイズです。解析には、REWのRTA(リアルタイムアナライザー)を使用します。

移動マイク法の測定結果は、固定された1つのマイク測定法よりも正確です。
ただし、この方法の難点は、測定者が車内にいる必要があることです。大音量で長時間の測定の場合には、測定者は耳がつらい状況になります。また、呼吸、マイクを動かすことで発生する風切り音、ケーブルがこすれるノイズによって、測定値が変化する可能性がありますので、極めて慎重に行う必要があります。

下図は、REWのRTA測定の初期設定例です。

上記の設定例では、20秒ほどで100回の平均値が得られます。

実際のやり方は、以下のYoutube動画(英語)をご覧ください。車室内ではありませんが、測定手順のイメージがつかめます。
https://youtu.be/6RiuwqzjqlQ

3.マイクアレイを使う(ログスイープあるいはピンクノイズ)

複数のマイクが付いたマイクアレイを用いた理想的な測定方法です。
リスナーの耳の位置(下図の緑の楕円)に等間隔に複数のマイクロフォンを設置し、その測定データを平均化するやり方です。通常、6つのマイクを用いることで、1/3オクターブ分析に相当する分解能が得られると言われています。
この測定手法は、自動車メーカーやカーオーディオメーカーなどでよく見られます。

写真のminiDSP UMIK-X(日本未発売 ご興味のある方は、当サイトのお問合せフォームよりご連絡ください)は、車室内測定を意識して開発されました。
8個のMEMSマイクで1つのアレイを構成しています。

日本では、miniDSP UMIK-Xの代わりに、UMA-16という16個のMEMSマイクを搭載したマイクアレイを取り扱っています。 製品にはUSBオーディオIFも搭載されていますので、それぞれのマイク出力信号を、簡単にREWに取り込むことができます。
※製品詳細は、UMA-16 v2製品ページをご覧ください。

マイクアレイを使用することで、チューニングにおいて最大の信頼性と再現性が得られます。
ログスイープやピンクノイズにも対応できます。REWとのコンビネーションでは、少し練習すれば、シングルマイクやバイノーラルマイク(後述)の結果よりも早く測定が実行できます。
下図の測定例は、各マイクの最小最大の変位範囲(グレー)と、その平均(赤)を表しています。

下図は、1項の測定と同じ車室内を対象に、マイクアレイを使って測定し、その平均値をオレンジで示しています。また、その後、アコースティック音場適用フィルターを通した結果を緑で示しています。
両者のカーブはかなり近いことが分かります。

4.バイノーラルマイクを使う(ログスイープあるいはピンクノイズ)

バイノーラルマイクとは、人間の頭部や耳介を模した構造を持ったステレオマイクで、できるだけ人の聴こえに近い状態で集音するように設計されています。下の写真は、代表的なバイノーラルマイク 3Dio社のFree Space ProⅡです。

音響学的には、バイノーラルマイクによる2ch測定は、1つのマイクを固定したアプローチよりも優れています。しかし、左右2か所での測定でしかないので、傾向としては1つの固定マイクの測定とさほど変わらず、中域から高域にかけてピークとディップを多く含んだ特性になります。
下図は、マイクアレイの測定結果(紫)とバイノーラルマイクでの測定結果(赤とオレンジ)の例です。