4出力のminiDSPプロセッサー:miniDSP 2×4 HD、DDRC-24、Flex/Flex TRS、Flex Digital、SHD、SHD Studio
miniDSP 2×4 HDまたはFlex/Flex TRS、Flex Digitalでは、従来タイプのクロスオーバー(リンクウィッツ・ライリー、バターワース、ベッセル)またはリニアフェイズ・クロスオーバー(FIRフィルター)のいずれかを実装することができ、 DDRC-24またはSHDシリーズでは、従来タイプのクロスオーバーを実装することができます。
このアプリケーションでは、それの実装方法について解説します。
下図は、miniDSP 2×4 HDのブロックダイアグラムです。
出力チャンネルのパラメトリックEQ(以下PEQ)は、個々のドライバーの応答を補正するために使用します(Correct response of each driver)。
入力チャンネルのPEQは、システム全体の周波数特性のチューニング(Overall response shaping)と、室内音響の問題を調整するために使用します。
Xover(クロスオーバー)は、従来タイプのクロスオーバーを実装する際に使用し、FIRはリニアフェイズ・クロスオーバーを実装する際に使用します。
次に、DDRC-24のブロックダイアグラムです。SHDシリーズもよく似ています。
出力チャンネルのPEQを使って個々のドライバーのレスポンスを補正するのは2×4 HDと同じですが、システム全体の周波数特性のチューニングと室内音響の補正には、Dirac Liveを使用します。
Xover(クロスオーバー)は、従来タイプのクロスオーバーを実装するために使用されます。
スピーカー設計をゼロから始める場合、最初にスピーカー・ドライバーを選択する必要がありますが、DIYで使用できるドライバーは、あらゆる価格帯に渡り何百種類もあるため、ここで具体的な推奨をすることはできません。
小型2ウェイ・スピーカーの場合、5インチまたは6.5インチ・ウーファーと1インチ・ドーム・トゥイーターが一般的な選択肢です。ネットを検索し、他の人がどのようなものを使っているかを調べたり、サークルやオーディオDIYのお仲間にお勧めのものを尋ねたりしてください。
エンクロージャーを自作する場合は、ボックスの機構設計を行う必要があります。
最も重要な要素は、容積です。バスレフポート付きボックスの場合は、ポートのサイズと長さです。
幸いなことに、この複雑な計算を行う無料のプログラムが数多くあります。ほとんどのプログラムは、有名なThiele/Smallパラメーター(別サイト)に基づいて設計されています。例えば、人気のあるExcelベースのプログラムはUnibox(別サイト)です。
既存の2Wayスピーカーを、内部のパッシブクロスオーバーから外部のアクティブクロスオーバーに変更する場合、まず内部のクロスオーバーを取り外し、次に各ドライバーの入力端子(バインディングポスト)を追加する必要があります。
次の図は、miniDSP 2×4 HD を例にした一般的な接続です。
図のように、各トゥイーターにコンデンサーを直列に接続することをお勧めします。
こうすることで、アンプからの電源オンオフのサージ(急激な電圧変動)からトゥイーターを保護します。また、誤って低周波のテスト信号をトゥイーターに送ってしまった場合の保護にもなります。
miniDSPプロセッサーは、任意の入力を任意の出力にルーティングまたはミックスすることができます。2ウェイのクロスオーバーを実装するには、下図のようにルーティングを設定します。(インプットとアウトプットのチャンネル名を変更する方法については、ユーザーマニュアルを参照してください)。
ボックスを作り、ドライバーをマウントしたら、各ドライバーのレスポンス(周波数特性)を測定する必要があります。
各出力チャンネルのPEQブロックを使って、各ドライバーのレスポンスが動作範囲でフラットになるように補正します。
ピークをフラットにするには “Peak “タイプのフィルター(ゲインをマイナスにしたノッチ特性)を使います。下図の例では、Broad notchとNarrow notchの2種類です。全体のレスポンスをフラットにするには “High-Shelf “と “Low-Shelf “タイプのフィルターを使います。また、Room EQ Wizard の AutoEQ 機能を使うこともできます。
理想的には、クロスオーバー周波数の1オクターブ上または1オクターブ下のレスポンスをフラットにします。
以下は、ウーファーの測定例です。測定のさまざまな特徴と補正すべき箇所をグラフに示しています(オレンジの斜線)。また、補正後のレスポンスが水色で示されています。
この例のように部屋内で測定した結果を使用する場合、部屋によって生じるピークやノッチ(Room effects)を補正しないように注意してください。
トゥイーターのレスポンス補正前と補正後のグラフです。トゥイーターの測定を行う際は、トゥイーターに負担をかけないような周波数から測定信号のスイープを開始してください(たとえば、20 Hzではなく1 kHzから開始します)。
おそらく、片方のドライバーのレベルを、もう片方のドライバーに合わせる必要があるでしょう。通常、出力チャンネルのゲインコントロールを使って、大きいレベルの方のドライバーのレベルを下げることによって行うのがベストです。
ドライバーのレスポンスをフラットにしたのですから、これは難しいことではありません。レベル調整後、両方のドライバーをそれぞれ測定し、クロスオーバー周波数付近でレスポンスがオーバーラップすることを確認するだけです。
クロスオーバーで良好な位相マッチングを得るために、ドライバーをタイムアライメントする必要があります。
UMIK-1あるいはUMIK-2を使ったスピーカー・ドライバーのタイムアライメントについては、スピーカードライバーのタイムアライメントをご参照ください。
クロスオーバーを実装するには、2つのオプションがあります。 IIR(従来タイプ)とFIR(線形位相)です。このセクションでは、IIRについて説明します。
OutputsタブのXoverボタンをクリックします。ウーファーにローパスフィルターを、トゥイーターにハイパスフィルターを設定します。リンクウィッツ・ライリー(LR)24 dB/オクターブ・フィルターを使用することをお勧めします。6~48 dB/オクターブまでのスロープを使用できます。下図は、ウーファー用のローパスフィルターの例です。
下図は、トゥイーター用のハイパスフィルターの例です。
次に、スピーカー全体のレスポンスを測定します。クロスオーバー周波数付近で最もスムーズなレスポンスを得るために、クロスオーバーの設定を微調整する必要があるかもしれません。
従来のIIRクロスオーバーの代わりに、miniDSP 2×4 HDやFlexシリーズでは、リニアフェイズ・クロスオーバーを実装することができます。
各出力チャンネルには1024のタップがあり、各出力チャンネルのFIRボタンをクリックすることでアクセスできます。
FIRフィルターの設計は、別途、FIR設計ソフトで行う必要があります。お勧めは、フリーウェアプログラムのrePhaseです。rePhaseについては、Advanced Tool のrePhase 紹介をご覧ください。
rePhaseに限らず、FIRフィルター設計の際には、タップ数とサンプリングレートの設定を、DSPハードに合わせる必要があります。miniDSP 2×4 HDやFlexシリーズの場合、タップ数を1024に、サンプリングレートを96kHzに設定します。
下図は、上記アプリケーション内の2Wayクロスオーバーの例です。
完成したら、スピーカーをリスニングルームの所定の場所に設置します。その後、部屋の影響を補正するルームEQを行い、最終的なサウンドを調整します。